小説 文学

芥川龍之介が考えた「小説の読者」3パターンについて。

投稿日:2018年3月19日 更新日:




芥川龍之介

誰もが知る小説家である彼は、

とうぜんながら読者でもあった。

芥川龍之介は、

「筑摩全集類聚 芥川龍之介全集第四巻」筑摩書房

のなかで、「小説の読者」と題した短文を遺している。

彼は様々な小説を読んでいたらしい。

僕は筋の面白い小説を愛読してゐる。それから僕自身の生活に遠い生活を書いた小説も愛読しないことはない。最後に、僕自身の生活に近い小説を愛読してゐることは勿論である。




芥川龍之介が定義する小説の読者3パターン

①小説の筋ばかり読むもの

現代にも多いのではないか。

「速読」なんてものは全てそうであろうし、

筋ばかりを読ませる小説は、

ドラマ化されやすいことからベストセラーにもなりやすい。

個人的には、一語一句小説家が書き連ねた思いを「速読」していくのは非常にもったいないと思う。

失礼とすら、思う。

②小説の中に描かれた生活に憧憬を持つもの

憧れを抱きながら読む小説。

芥川はこう書く。

僕の知つてゐる或る人などは随分経済的に苦しい暮らしをしてゐながら、富豪や華族ばかり出て来る通俗小説を愛読してゐる。

貧富の他にも、憧憬を持つ対象はあり、

例えば、

モテない人⇨モテる人

弱い人⇨強い人

人見知りの人⇨交流的な人

など、様々なパターンがある。

そしてまた、憧憬の対象へと成長する過程を描いた小説も少なくない。

というか殆どの小説にはそうした要素が入っている。

例えば、この本。題からしても分かりやすい。

③読者自身の生活に近いものばかり求めるもの

芥川も愛読していたという「自身の生活に近い」小説。

これらを好むタイプは、小説に「共感」を求める。

芥川龍之介の作品にもそうした読者を想定した作品は多い。

ほかにも、太宰治はその代表格であろう。

 

③パターンの善悪

芥川龍之介は読者を3つのパターンに分けたが、

そこに善悪があるわけではないという。

芥川自身が、

「この三つの心持ちは、同時に僕自身の中にも存在してゐる。」

と書いているように、その全てがなければ、

あれだけの小説は書けなかったであろう。

芥川は、小説の評価を何で決定するかについて、

自身と世間の読者との違いを記した。

それは、

感銘の深さとでも云ふほかはない。それには筋の面白さとか、僕自身の生活に遠いこととか、或はまた僕自身の生活に近いこととか云ふことも勿論、幾分か影響してゐるだらう。然しそれらの影響のほかに未だ何かあることを信じてゐる。




-小説, 文学
-

執筆者:


comment

メールアドレスが公開されることはありません。

関連記事

読書のBGM。本と相性の良い音楽たち。民族音楽、ジャズ、ロック。夢野久作、筒井康隆、絲山秋子、他。

本と音楽 読書の際に、音楽を聴く。 本の世界を邪魔しないもの、 逆に、本の世界に導いてくれるもの。 本と音楽には相性がある。 何で音楽を聴くか   音楽を紹介する前に、 音楽を聴くアイテムと …

漫画『昭和元禄落語心中』(著:雲田はるこ)が現代に生まれたワケと歴史

『昭和元禄落語心中』とは? 昭和元禄落語心中(1) (ITANコミックス)[Kindle版] posted with ヨメレバ 雲田はるこ 講談社 2012-09-28 Kindle Amazon[書 …

アメトーーク!読書芸人で紹介された本たち②

『応仁の乱』呉座勇一 応仁の乱 – 戦国時代を生んだ大乱 (中公新書) posted with ヨメレバ 呉座 勇一 中央公論新社 2016-10-19 売り上げランキング : 17 Am …

落語は人間の業の肯定である。立川談志の『五貫裁き』の名言。落語と本。

談志の『五貫裁き』を聴いた。 立川談志プレミアム・ベスト 落語CD集「勘定板」「五貫裁き」 posted with カエレバ 立川談志 日本コロムビア 2008-09-24 Amazon 楽天市場 立 …

梨木香歩の名作『ピスタチオ』は小説家志望者にとっての指南書でもある。オススメ小説も紹介します。

梨木香歩『ピスタチオ』 ピスタチオ (ちくま文庫) posted with ヨメレバ 梨木 香歩 筑摩書房 2014-11-10 Amazon Kindle 楽天ブックス 内容(「BOOK」データベー …