オススメ品 小説 文学 知識 音楽

保坂和志『小説の自由』から「優れた小説」とは何かを考える。

投稿日:2017年5月6日 更新日:




保坂和志『小説の自由』

内容(「BOOK」データベースより)

誰よりも小説を愛する小説家が、自作を書くのと同じ注意力で、実際の小説作品を精密に読んでみせる、驚くべき小説論。

「優れた小説」とは?

保坂和志『小説の自由』を読みながら、

ずっとそのことを考えていた。

まず、世間的によく言われる「優れた小説」について。

なにが文学界で話題になり、なにが評価の対象になっている風潮があるか。

そこでいう「文学的に優れている」とは、技巧的なことだ。

風景描写が心情化、人間化されているだとか、

ストーリーが秀逸だとか、そうゆうこと。

しかし、それは小説の優劣を決めることだろうか?

答えは、否である。

小説はもっと自由なもののはずだ。

読んでいる間に、ぱーっと世界が開かれていく。

目で見て耳で聞いて、鼻で嗅いで、空気に触れる。

そうした全ての感覚を与えてくれる小説こそ素晴らしいのであり、

それは必ずしも技巧的なものを必要としない。



「音楽のような小説を」「音楽のように小説を」

それは音楽を楽しむときと比べると分かりやすい。

小説を音楽のように読めないだろうか。

例えば好きな音楽なら何度も繰り返し聴くことがある。

それに比べて小説は数回読み返しただけのものが、最も好きな小説だったりする。

もっと音楽のように小説を楽しむべきだ。

何度も何度も繰り返し読んで、その度に新しい発見がある小説。

それこそ本当の小説の価値ではないだろうか。

本当の小説の価値を生み出すために

では、そうした小説の価値を生み出すためには、どうしたら良いだろう。

ここでまた音楽を参考にすると、それはリズムがあることだ。

言葉のリズムが、脳の中で踊り出すような小説。

一気に読んでいるうちに、ふと立ち止まって考え込ませてくれる小説。

例えばそれはカフカである。

保坂和志は、小島信夫こそ日本のカフカであるという。

それは、木に例えられる。

葉っぱがあり、その奥にあるはずの幹を探していく。

探しているが、そこにはずっと葉っぱしかない。

でもきっとその先に幹があると感じさせる。

そうした推進力のある小説。

音楽のような小説。

私にとってそれは、たとえばこんな小説だ。

 

小島信夫『アメリカンスクール』

内容(「BOOK」データベースより)

アメリカン・スクールの見学に訪れた日本人英語教師たちの不条理で滑稽な体験を通して、終戦後の日米関係を鋭利に諷刺する、芥川賞受賞の表題作のほか、若き兵士の揺れ動く心情を鮮烈に抉り取った文壇デビュー作『小銃』や、ユーモアと不安が共存する執拗なドタバタ劇『汽車の中』など全八編を収録。一見無造作な文体から底知れぬ闇を感じさせる、特異な魅力を放つ鬼才の初期作品集。

町田康『パンク侍、斬られて候』

内容(「BOOK」データベースより)

江戸時代、ある晴天の日、街道沿いの茶店に腰かけていた浪人は、そこにいた、盲目の娘を連れた巡礼の老人を、抜く手も見せずに太刀を振りかざし、ずば、と切り捨てた。居合わせた藩士に理由を問われたその浪人・掛十之進は、かの老人が「腹ふり党」の一員であり、この土地に恐るべき災厄をもたらすに違いないから事前にそれを防止した、と言うのだった…。圧倒的な才能で描かれる諧謔と風刺に満ちた傑作時代小説。




-オススメ品, 小説, 文学, 知識, 音楽
-, ,

執筆者:


comment

メールアドレスが公開されることはありません。

関連記事

2017年ベスト小説⁉︎ 坂口恭平『けものになること』 まるで音楽。読む麻薬。

建築家、作家、絵描き、踊り手、歌い手・・・ 様々な肩書を持ち、 現代日本で最も異彩を放つ男。 坂口恭平。 彼ほどまでに自分らしい生き方を模索し、 実行している人はいるだろうか。 その実行力は学生時代か …

読書のBGM。本と相性の良い音楽たち。民族音楽、ジャズ、ロック。夢野久作、筒井康隆、絲山秋子、他。

本と音楽 読書の際に、音楽を聴く。 本の世界を邪魔しないもの、 逆に、本の世界に導いてくれるもの。 本と音楽には相性がある。 何で音楽を聴くか   音楽を紹介する前に、 音楽を聴くアイテムと …

ブックオフの宅本便で古本の買取をお願いしてみたレビュー

ブックオフの宅本便 宅本便とは? 家にいながらにしてブックオフに本を売れるサービス。 手続きはブックオフオンラインに登録し、 集荷にきてもらう日付などを入力するだけ。 申し込み画面はこんな感じだ。 & …

真実後政治とは? 日本人の性格 vs マスメディアの嘘

現代人とマスメディア 現代人は政治の嘘に寛容になりすぎた。虚偽が検証されぬまま批判もされず、後に、誇張や言い間違いだと弁明すれば、許容される。虚偽が罷り通る「真実後政治」が世界に広がっているのだ。海外 …

ショートショート小説『首』

『首』 空に穴が開いている。彼はそれを月だと言う。僕はそれを信じない。信じられない。 「あれは月なんかじゃない」 僕は三度目となる同じ言葉を彼に浴びせた。 「じゃあ何だっていうんだよ」 彼は溜息をつい …