草津温泉にゆかりのある作家
草津温泉の名所「湯畑」に着いた途端、
文豪の名前が目に飛び込んできた。
志賀直哉、田山花袋の他にも、
草津は多くの作家に愛されてきた。
この写真の他にも、
見ているだけでも楽しくなるほど、
色々な作家の名がある。
今回はそんな「草津と作家」について、
萩原朔太郎『猫町』
詩人である萩原朔太郎は、
小説家でない私は、脚色や趣向によって、読者を興がらせる術すべを知らない。私の為なし得ることは、ただ自分の経験した事実だけを、報告の記事に書くだけである。
という前置きの元、この小説を書き始める。
その頃私は、北越地方のKという温泉に滞留していた。九月も末に近く、彼岸を過ぎた山の中では、もうすっかり秋の季節になっていた。都会から来た避暑客は、既に皆帰ってしまって、後あとには少しばかりの湯治客とうじきゃくが、静かに病を養っているのであった。秋の日影は次第に深く、旅館の侘わびしい中庭には、木々の落葉が散らばっていた。私はフランネルの着物を着て、ひとりで裏山などを散歩しながら、所在のない日々の日課をすごしていた。
この「Kという温泉」は、
草津温泉のことである。
萩原自身は、
「デカダンスの幻覚しにか過ぎない」(かもしれない)と書いているが、
『猫町』は不思議で魅力的な小説だ。
これを読む度に、私は、
萩原朔太郎がもっとたくさん「小説」を書いていてくれたら、と願ってしまう。
志賀直哉『暗夜行路』
内容(「BOOK」データベースより)
祖父と母との不義の子として生まれた宿命に苦悩する人主公時任謙作は、単身、尾道に向い、千光寺の中腹の家を借り、一人住いを始める。しかし、瀬戸内海の穏やかな風光も、彼の心に平安をもたらさない。長年月を費してなった志賀直哉唯一の長篇。
この志賀直哉の代表作も、
特に後半部分を
草津で書いたと言われている。
田山花袋『温泉めぐり』
内容(「BOOK」データベースより)
自然主義小説家・田山花袋はまたジャーナリストで無類の旅行好き。手甲脚絆、日に十数里もゆく昔の旅と全国の温泉を美辞麗句抜きで素朴に記す。風景・湯量・宿・人情をなつかしく綴る紀行文は今日温泉を巡る者にもよき伴侶となるだろう。
小説家随一の温泉好き、田山花袋。
この『温泉めぐり』は、
一見ガイドブックのようなイメージだが、
その情景描写を読めば、田山花袋だからこそ書ける無二の文学作品であることが分かるだろう。
おまけ
草津温泉、湯畑の近くには、
タオルさえ持っていけば無料で入れる温泉が多くある。
また、数百円で「湯もみ」の体験も可能。
作家たちが愛した土地に、
足を運んでみてはいかがでしょうか。