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絲山秋子とロック ― 小説と音楽の融合(ビート・ジェネレーション、Theピーズ・・・)

投稿日:2017年3月28日 更新日:




絲山秋子とは?

≪略歴≫

東京都世田谷区出身。

東京都立新宿高等学校、早稲田大学政治経済学部経済学科卒。

卒業後INAXに入社。営業職として数度の転勤を経験。

1998年に躁鬱病を患い休職、入院。

入院中に小説の執筆を始める。

≪受賞歴≫

 

●2003年(平成15年) – 第96回文學界新人賞(『イッツ・オンリー・トーク』)
●2004年(平成16年) – 第30回川端康成文学賞(『袋小路の男』)
●2005年(平成17年) – 第55回芸術選奨文部科学大臣新人賞(『海の仙人』)
●2005年(平成17年) – 第134回芥川龍之介賞(『沖で待つ』)
●2016年(平成28年) – 第52回谷崎潤一郎賞(『薄情』)

絲山秋子とロック

絲山秋子の作品には、数多くの音楽作品が顔を出す。

なかでもロックに対する造詣が深く、

日本、世界限らず様々な楽曲やアルバムを作品のなかに入れ込んでいる。

特に、小説『ダーティ・ワーク』では、

ローリング・ストーンズのアルバム

『Dirty Work』を題にするだけでなく、

『Worried About You』から始まる7編全てに、

ストーンズの楽曲名がタイトルに冠せられている。

「異性を描く」ということ

絲山秋子の魅力は、まだまだある。

なかでも特筆すべきなのは、男性を描く巧さであろう。

 

(現代において、作家の性別を問題にするのは、ナンセンスであるが)




 

日本文学の歴史において、

「男性が女性を書く」/「女性が男性を書く」

ということが幾度も問題になってきた。

彼女は、『エスケイプ』や『ばかもの』で見事に男性を描いている。

 

紀貫之『土佐日記』

平安時代まで遡れば、男性の紀貫之が『土佐日記』を、

女性として書いている。

「男もすなる日記というものを、女もしてみむとて、するなり」

という冒頭の一文は有名だ。

その文章には「ひらがな」が使われている。

(『土佐日記』は文学史上、初めてひらがなで書かれた文学作品と言われている。)

当時は、男性が「ひらがな」を使うことが良しとされていなかった。

そのため女性仮託を行ったのである。

また、894年に遣唐使の廃止が行われ、

国風文化の栄えとともに、中国の「漢字」ではなく、

日本の「ひらがな」を用いたとも言われている。

(この歴史がなければ高い識字率の日本はなかっただろう。)

このように、男性が女性を描くことは昔から行われてきた。

しかしながら、女性が男性を描くとなると、

そういった小説は数多あるものの、ぱっとしなかった。

そこに現れたのが絲山秋子である。

彼女の男性を描く巧さは、その著作を拝読すれば一目瞭然だ。

さて、前置きはこれぐらいにしておいて、著作の紹介にうつる。

 

『逃亡くそたわけ』& Theピーズ

この作品には、Theピーズの楽曲が使われている。

作品の内容は、精神病棟を抜け出した男女が逃避行をするというもの。

この構成自体にも音楽の影響が濃いことが生まれる。

まず思い浮かぶのが、ビート・ジェネレーションだ。

ビート・ジェネレーションとは?

1950年代から1960年代にアメリカ文学界に登場。当時の社会体制、社会の価値観を否定し反抗した一部の作家たちの総称のこと。ビートニク(Beatnik)とも呼ばれる。

主な作家には、

●ジャック・ケルアック

●ウィリアム・S・バロウズ

●アレン・ギンズ・バーグ

などが挙げられる。

『逃亡くそたわけ』を呼んで思い浮かべたのは、

ケルアックの『オン・ザ・ロード』(別名:路上)だ。

数年前に映画化されたことでも記憶に新しいこの作品。

アメリカ放浪生活を中心に書かれた自伝的な作品であり、

当時ヒッピーなどから熱狂的な支持を受け、

「ヒッピーのバイブル」とも呼ばれていた。

また、この作品が愛されたことでケルアックは、

「ビートの王」「ヒッピーの父」などとも呼ばれることもある。

ジム・モリソンやボブ・ディランなど、

当時のミュージシャンたちにも影響を与えたと言われている。

この世代の文学が、音楽に与えた影響は大きい。

『オン・ザ・ロード』も『逃亡くそたわけ』も「移動」を描いている。

それは時代は違うにせよ、若者たちの感情が齎した「移動」だ。

Theピーズ

『逃亡くそたわけ』のなかに挿入されているのは、

主に『どこへも帰らない』というアルバムだ。

 

彼らの廃退的な歌詞が、

『逃亡くそたわけ』と見事に融合している。

歌詞をここに引用するのは控えるが、気持ちいいほどの融合だ。

それはかつて、ビート・ジェネレーション(文学)が、

音楽に齎した影響に対しての感謝とも思えてくる。

是非、味わってみてほしい。

 

まとめ

絲山秋子の作品には、

他にもたくさんの音楽作品との融合が図られている。

そして、ここでは書ききれるはずがない程の魅力がある。

絲山秋子の作品は、音楽と、そして私たち読者と融合する。







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