『人間の建設』
内容(「BOOK」データベースより)
有り体にいえば雑談である。しかし並の雑談ではない。文系的頭脳の歴史的天才と理系的頭脳の歴史的天才による雑談である。学問、芸術、酒、現代数学、アインシュタイン、俳句、素読、本居宣長、ドストエフスキー、ゴッホ、非ユークリッド幾何学、三角関数、プラトン、理性…主題は激しく転回する。そして、その全ての言葉は示唆と普遍性に富む。日本史上最も知的な雑談といえるだろう。
小林秀雄
1902‐1983。東京生れ。東京帝大仏文科卒。1929(昭和4)年、「様々なる意匠」が「改造」誌の懸賞評論二席入選。戦中は「無常という事」以下、古典に関する随想を手がけ、終戦の翌年「モオツァルト」を発表。’67年、文化勲章受章。連載11年に及ぶ晩年の大作『本居宣長』(’77年刊)で日本文学大賞受賞
岡潔
1901‐1978。大阪生れ。日本数学史上最大の数学者。1925(大正14)年、京都帝大卒業と同時に講師に就任、以降、広島文理科大、北大、奈良女子大で教鞭をとる。多変数解析函数論において世界中の数学者が挫折した「三つの大問題」を一人ですべて解決した。’60(昭和35)年、文化勲章受章
日本史上最も知的な対談
この本が「日本史上最も知的な対談」と呼ばれる意味は、
多変数関数論の基礎を築いた岡潔と
日本トップの批評家小林秀雄との対談であるという点。
これはまさに、
理系のトップと文系のトップの会話である。
非常に難しい領域のことを話し合っているものの、
理系的な言葉のみでは理解しにくいことが、
文系的な言葉が補われることによって、
理解しやすくなっています。
それはまた、
岡潔が、数学者でありながら「情緒」を大切にした人物であったからでもありましょう。
つまり思想家としての一面もあったからこそ、
この2人の対談はより深く面白くなったのではないか。
このブログを読んでくださっている方には、「言葉」についての対談部分は是非読んでほしい。
ある言葉がヒョッと浮かぶでしょう。そうすると言葉に力がありまして、それがまた言葉を生むんです。私にはイデーがあって、イデーに合う言葉を拾うわけではないのです。
小林秀雄は、
言葉がでてきて、その言葉が子供を生み文章ができる
と言います。
文章はやはり、考えてから書くものではなく、考えながら書くものだと思わされるのです。