小説 文学 知識

『井上ひさしと141人の仲間たちの作文教室』から学ぶこと① 「書くこと」は「知ること」だ!

投稿日:2017年3月12日 更新日:

私が、かねてから、

これを国語の教科書にすればいいではないかと思っている本がある。

井上ひさし 『井上ひさしと141人の仲間たちの作文教室』だ。

今回は、ものを書くときに必要な手順について、 この本から学べることを要約する。

「ものを書くときは(いまから書くことが)全部わかっていたらつまらない。」

ものを書く楽しさは、書いているうちに自分にも予想もつかないような展開になること。

つまり、 「書くこと」=「知ること」だと、彼は言っています。

彼はこれを、 「思いがけない邪魔者」 と呼びます。

その邪魔者に出会った時に、はじめて文章は自分にも、読む人にも面白くなる、と。

文章を書くには、 以下のステップを踏む必要があるのです。

【文章を書くステップ】

①理屈で組み立てる もうどこからでも書けるというところまで考え抜き、一旦それを脇に置いて、書き始める。

②邪魔者に出会う いくら考え抜いたあとでも、書いていくうちに、予想もつかなかった展開になる(邪魔者に会う)。

③知る 書き始めるまでは考えてもなかったことを発見する。   こう書くと、 文章を書いていれば新しいことを知れる、と思うかもしれません。

しかし、全くの更地からはなにも生まれません。 言葉通りの不毛です。

ここで重要になるのが、 「長期記憶」 だと井上ひさしは書いています。

人の記憶は、「短期記憶」と「長期記憶」に分けられます。

簡単に説明します。

「短期記憶」: 読んだり見たりしたものを一時的に保持する部分。容量はかなり少ない。単語数にして、わずか7〜8語。すぐに忘れるための記憶とも言える。

「長期記憶」: 夥しい数の過去の体験を、実体験、映像体験、言語体験を問わず、長い時間をかけて溜め込んだもの。人の財産となり、百科事典となる。忘れ去ってはならないと脳が記憶するもの。

以前このブログで、 井上ひさし『ふふふ』というエッセイを紹介しました。

http://teiyatottori.com/2017/03/11/%E4%BA%95%E4%B8%8A%E3%81%B2%E3%81%95%E3%81%97%E3%80%8E%E3%81%B5%E3%81%B5%E3%81%B5%E3%80%8F%E3%81%8B%E3%82%89%E5%AD%A6%E3%81%B6%E3%80%81%E3%80%8C%E3%81%A9%E3%81%93%E3%81%A7%E3%82%82%E3%83%89%E3%82%A2/

そこに書かれていた「体験」の重要性 。

ここでもやはり、 彼は、「体験」の重要性を、 今度は「長期記憶」という言葉とともに書いています。

ものを書くには「体験」。

それも、忘れ去ってはならないと記憶するに値する体験が、必要なのです。

ここで間違ってはならないのは、 長期記憶を意識しながら書く必要はない、ということ。

長期記憶は、あくまでも書いていく途中で「邪魔者」に出会うために重要なだけです。

つまりは、日々、体験を積み重ねながら、 書き始めること。

これに尽きるのです。

-小説, 文学, 知識
-, ,

執筆者:


comment

メールアドレスが公開されることはありません。

関連記事

物書きにも役に立つ、ランチェスター戦略とは?『小さな会社の稼ぐ技術』栢野 克己  (著)を読めば、小説・ブログなど、自分だけのものが書ける!

ランチェスター戦略とは? もともとは、軍事戦略における損害量計算から導き出されたもの。 この法則は、第二次世界田大戦中に、主にアメリカ軍が用いて効果を発揮した。 この軍事戦略であったはず「ランチェスタ …

ショウペンハウエル『読書について』から本当の「本の読み方」を学ぶ。

『読書について』ショウペンハウエル 読書について 他二篇 (岩波文庫) posted with ヨメレバ ショウペンハウエル 岩波書店 1983-07 Amazon Kindle 楽天ブックス 表紙に …

廃車の活用。旅行ガイドとしても楽しめる廃車本を紹介。

日本の廃車が 東南アジアにでかけると、 日本の車両に出会えることがある。 日本で廃車となった車両は、 海を越え、新しい場所で人々を乗せ続けている。 このことを知ったのは、とある本との出会い。 東南アジ …

prime reading(プライムリーディング)おすすめ書籍一覧。ビジネス書、文学、雑誌まで色とりどりの本を楽しもう!

プライムリーディング Kindle Paperwhite 32GB、マンガモデル、Wi-Fi 、ホワイト、キャンペーン情報つきモデル posted with カエレバ Amazon 2016-10-2 …

外山滋比古の『思考の整理学』から『知的文章術』まで、必読のオススメ本を紹介!

外山滋比古 とやましげひこ。 お茶の水女子大学名誉教授。 日本の英文学者、言語学者、評論家、エッセイスト。 文学博士である。 全日本家庭教育研究会元総裁。 外山家は法海山龍護院妙光寺の旧檀家。 『思考 …