文学 知識

中原中也はイケメンか 大岡昇平『中原中也』

投稿日:2017年3月11日 更新日:




 

中原中也と聞くと、
どのような姿を思い浮かべますか。

暗いハットの下に光を帯びたモノメニアックな目。

スーツ姿で寝癖の付いた髪。

幼年時代の尖った耳。

おそらくこの3つのうちどれかであろう。

中原中也の詩集を読んでいて、

ぱたと本を閉じた時、

表紙に写る彼の顔を見て、

ああこの人はイケメンなのではないか、

と思った。

中原中也で画像検索をして、

その写真に自分の好みの髪型を想像してほしい。

ホラホラ、イケメンではないか。
『骨』

ホラホラ、これが僕の骨だ、
生きていた時の苦労にみちた
あのけがらわしい肉を破って、
しらじらと雨に洗われ、
ヌックと出た、骨の尖(さき)。

それは光沢もない、
ただいたずらにしらじらと、
雨を吸収する、
風に吹かれる、
幾分(いくぶん)空を反映する。

生きていた時に、
これが食堂の雑踏(ざっとう)の中に、
坐(すわ)っていたこともある、
みつばのおしたしを食ったこともある、
と思えばなんとも可笑(おか)しい。

ホラホラ、これが僕の骨――
見ているのは僕? 可笑しなことだ。
霊魂はあとに残って、
また骨の処(ところ)にやって来て、
見ているのかしら?

故郷(ふるさと)の小川のへりに、
半(なか)ばは枯れた草に立って、
見ているのは、――僕?
恰度(ちょうど)立札ほどの高さに、
骨はしらじらととんがっている。




中原中也の『骨』です。

詩はしばしば、

「自分の感性が見れる鏡」だと言われます。

私は彼の詩を読むと、笑ってしまいます。

哀しい中にどこか可笑しさがあるのです。

その可笑しさがなければ、

彼は詩を書き続けなかったことでしょう。

どこかふざけている。

ふざけないと生きていけない。

そういった生きる上での哲学が

彼の詩には表れています。
そんな中原中也の生き方が、

友人の視点で描かれた本があります。

大岡昇平『中原中也』

 

親交のあった大岡昇平が中原中也の生き様について、語っています。

そこには友人の視点ならではの、中原中也の魅力がたっぷり詰まっておりました。




-文学, 知識
-, ,

執筆者:


comment

メールアドレスが公開されることはありません。

関連記事

遠藤周作は『沈黙』だけではもったいない。小説だけではなく、エッセイにこそ彼の魅力が詰まっている。

遠藤周作とは? 遠藤 周作(えんどう しゅうさく、1923年(大正12年)3月27日 – 1996年(平成8年)9月29日)。 日本の小説家。随筆や文芸評論や戯曲も手がけた。 代表作は、 …

コーヒー好きにオススメの本『珈琲の世界史』を紹介

珈琲と本   偏見でしょうか?   本好きには コーヒー好きが多いように思います。   そういえば、 コーヒーや喫茶店を題材にした 小説もたくさんありますね。 &nbsp …

「誰にでもわかる言葉で、誰にも書けない文章を書く」作家・山崎ナオコーラのオススメ小説5選

山崎ナオコーラとは? 会社員を経て26歳で作家になる。 『人のセックスを笑うな』で第41回文學賞を受賞し、 衝撃的なデビューを果たした。 その後数ある小説やエッセイを出版。 受賞にこそ至っていないもの …

【小説家志望者必見】5大文学新人賞について(傾向・おすすめ受賞作も紹介)

小説家になるために 小説家になるには色々な方法がある。 ・作品を出版社に売り込む(⇒あしらわれて終わる) ・ネットで小説を公開する(⇒無料公開のデメリットが大きい) ・自費出版(⇒お金が掛かる。売れに …

コミュ力の向上、コミュ障の改善は平田オリザ『対話のレッスン』から学べ!これで対人関係の悩みは解消される!

平田オリザとは? 平田 オリザ(ひらた オリザ、男性、1962年11月8日 – )は日本の劇作家、演出家。 劇団青年団主宰、こまばアゴラ劇場支配人。 代表作に『東京ノート』『ソウル市民』三 …