「読解力」と「理解力」
同じ本を読んでいるのに、
感じることや得ることが違う。
これは良いことでもあるし、
本(テクスト)の醍醐味である。
フランスの批評家ロラン・バルトは、
『作者の死』と表現するとともに、
文章に対するこんな考え方を提唱した。
ロラン・バルトの『テクスト論』
文章を作者の意図に支配されたものと見るのではなく、あくまでも文章それ自体として読むべきだとする思想のことをいう。文章はいったん書かれれば、作者自身との連関を断たれた自律的なもの(テクスト)となり、多様な読まれ方を許すようになる。
では、『テクスト論』を踏まえた上で、
読解力・理解力とは何か?
それは、
「自由に読み、より多くのことを感じ、より多くのことを知り、より多くのことを得る能力」
だと考える。
今回はそんな能力を養うための本を紹介する。
『小説的思考のススメ: 「気になる部分」だらけの日本文学』阿部公彦
【内容紹介】
大江健三郎の作品が〈何となく頭に入らない〉のはなぜ? 太宰治の登場人物が〈丁寧〉に喋るのはどうして? 佐伯一麦の主人公がいつも〈私〉のわけは?――気になる部分に注目すれば、作品に凝らされた仕掛けが見えてくる。読み方のコツを知り、このジャンルに独特な“頭の働き”を鍛える小説入門。
太宰や漱石など歴史的な文豪から、
古井由吉、辻原登、絲山秋子など現代に生きる作家までを網羅。
文学好きなら読んで楽しく「力」が身につく良書である。