オススメ品 ニュース 文学

遠藤周作『友を偲ぶ』、三島由紀夫の「政治の芸術家」からICANのノーベル賞受賞と現代政治を考える。

投稿日:





核関連のノーベル平和賞

核関連のノーベル平和賞は1962年のアメリカのライナス・ポーリングから始まり、これまでに多くの受賞歴がある。

今回のICANを含め、その殆どが理念や訴えを評価されての受賞だが、

受賞そのものが核廃絶に向けて何らかの好影響を与えているとは考えにくい。

オバマが受賞した際には、大統領就任後あまりに早い受賞に批判の声が相次いだ。

「ノーベル平和賞は特定の業績を顕彰するためだけではなく、一連の目的に弾みを付ける手段として用いられることもあるということも承知している。」

とオバマ自身がスピーチで語っているように、核関連のノーベル平和賞に特定の業績は未だかつてないといってもいい。

アメリカが銃を廃絶できないことと同様に、北朝鮮が核規制を行うわけがない。

ノーベル平和賞の意義

ノーベル平和賞は、あまりにも理想的な理念に対して賞が贈られている。

生きていれば、「イマジン」や「ラブ&ピース」の理念でジョン・レノンも受賞したことだろう。

理念を称えるというのは、政治的ではない。

それは芸術に対して行うべき評価であり、言い換えれば、政治の芸術化が日常的に行われていることの証左である。

ノーベル平和賞は政治的だといわれている。それは即ち芸術的であるということだ。

三島由紀夫の言葉(遠藤周作『友を偲ぶ』より)

 

 

こうした政治の審美化を考えずはいられないとき、思い出す言葉がある。

三島由紀夫の

「自分を理解しない人間を寄せつけないのは、芸術家として正しい態度である。芸術家は政治家じゃないのだから。」

という文章だ。

核をとりまく政治の芸術家は、人を寄せ付けない北朝鮮にとって恰好のものなのではないか。

いま予想されているアメリカによる公開限定空爆は、

演劇を実生活に戻すという意味を持っているだろう。

それは「理念」を打ち砕くことでもあり、核兵器開発施設とともに芸術化された理念が灰燼に帰す。

2重の意味をもっているように思う。

朝日新聞が紙面の多くを使い、核廃絶活動に対する「ノーベル平和賞受賞」を喜んだことが象徴のように、

日本もまた、公開限定空爆で目を覚ます国の一つであろう。

こうした一度壊してより強固なものを再構築するというのは、今回絶好のタイミングで総選挙を行った安倍首相と重なる部分がある。




グローバリズムの崩壊と自国第一主義の台頭

トランプ大統領の誕生は、グローバリズムの崩壊と自国第一主義の幕開けを意味する。

トランプはTwitterに

「我が国は法治国家だ。我々は今後、不法移民を奨励することはない」、

「我々は間違いなく、アメリカ国民の利益を最優先する!」とツイートした。

「アメリカ・ファースト」を選んだトランプが今最も信頼している首相をもつ日本は、

アメリカに負けないエゴイズムを発揮していかなければならない。

思えばグローバリズムの構造自体も、世界が一つになるという芸術的な幻想ではないか。

弱体化するマスメディア

ブレグジッドに続き、ヒアリーvsトランプの大統領選を見誤り、

いまや大手メディアの情報に対する信頼度は低下し続け、国民もそれに気づき始めている。

大手メディアの報道は、前述した政治の芸術化の考え方から言えば、映画のようなものだ。

スクリーンを前に、共感し、時には画面のなかに自分がいるような錯覚を覚えてしまうこともある映画。

しかしそれも映画館を出れば、現実に直面する。

いま私たちにもとめられているのは、安倍首相がすでにいる場所、即ち、映画館の外にまずは足を踏み出すことである。









-オススメ品, ニュース, 文学
-, ,

執筆者:


comment

メールアドレスが公開されることはありません。

関連記事

若松英輔『生きる哲学』 「コトバ」とは何か? これを読めば、井筒俊彦の哲学がスッキリ分かる!

  『生きる哲学』 著:若松英輔 この本は、いつでも自分の足で確かに立ち、 新たな思索を切り開いた14人の「生きる哲学」を知ることができる。   「哲学」と聞くと、小難しく、机上で …

【おすすめ哲学書】デカルト『方法序説』の「我思う、ゆえに我あり」についてとは何か?

哲学書って難しい? 哲学書や哲学史は難しいイメージがあった。 しかし哲学を知ることは、こころをおおらかにしてくれる。 「忙しくて時間がない」と言われている現代人。 読書でさえも「速読」がスキルとされる …

VAPE(電子タバコ)初心者におすすめの商品。Bedeeの紹介。おすすめリキッドDEEP IMPACT。

VAPE(べイプ)電子タバコとは? 欧米やアジア諸国を中心に大流行している電子タバコの一種。 香りのついたリキッド(液体)を電気の力を使って 加熱することで水蒸気を発生させ、それを吸う仕組み。 流行り …

『現代世界の十大小説』池澤夏樹 いま読むべき世界文学10選

池澤夏樹とは? 池澤 夏樹(いけざわ なつき、1945年7月7日 – )は、 日本の小説家、詩人。翻訳、書評も手がける。日本芸術院会員。 文明や日本についての考察を基調にした小説や随筆を発 …

【酒と小説】お酒を片手に読むべき、おすすめ本

飲酒読書 読書は飲酒していても罪にならない。 たとえそれが、ドライブの話でも、仕事の話でも、 酒を飲みながらにして、物語に入っていける。 自分自身をどのような状態にして、本と向き合うか。 これは殆ど実 …