「速読」か「遅読」か
本を読むスピードは、人それぞれだ。
しかし「速読」が優れた読書だというイメージが蔓延っている。
読むことが遅くて悩んでいる、なんて人も少なくなかろう。
たしかに本を早く読むことは時短に繋がる。
ビジネス本や自己啓発本などを読むときは、それでいいかもしれない。
しかし、「文学」に接するときに速読するのは、不適切ではないだろうか。
それは文学者に対する冒涜のような気がするのである。
そしてやはり多くの文学関係者が「遅読」を薦めている。
『本の読み方 スロー・リーディングの実践』
小説家の平野啓一郎氏がその一人だ。
この本によると、著者を含め文学者には遅読の方が多いという。
確かに遅く読むことによって、楽しさが増すだろう。
本では、夏目漱石の「こころ」などを取り上げ、
実践的な「遅読」について語られている。
「本が遅いこと」がコンプレックスの人、文学が好きな人、
には是非読んでみることをおすすめする。
『遅読家のための読書術』
それでも、遅読を改善したいという方におすすめなのがこの本。
所謂「速読本」ではなく、
「フロー・リーディング」を提唱している。
フロー・リーディングとは?=音楽を聴くように読むこと。
「読書の主役は作者ではなく読者。作者様が書いた文章をちゃんと読まなければ、なんて思わなくていい。もっと自分勝手に飛ばしながら読んでいけばいい」
「音楽を聞くとき、一音たりとも逃さず聞くぞ、と意気込む人は居ない。じゃあ何故、読書に限っては、一ページたりとも逃さないぞ、と意気込んでしまうのか。音楽も読書も同じ遊びであり、勉強ではない。もっと気楽に本と向き合え」
こうした言葉が並んでいる。
文学に深く接する為には、「スロー・リーディング」を。
文学に沢山接する為には、「フロー・リーディング」を。
といったところだろうか。
「文学」を楽しむ為には、まず自分の読書習慣を見つめ直してみるのも良いかもしれない。