小説 文学 知識

志賀直哉『暗夜行路』は恋愛小説ではない。志賀直哉の文体とは?

投稿日:2017年5月6日 更新日:




志賀直哉『暗夜行路』は恋愛小説ではない。

志賀直哉『暗夜行路』は、当時小林秀雄などによって恋愛小説という批評を受けた。

しかしこの小説を単に「恋愛小説」と括ってしまうのは、あまりに勿体無い。

実際、志賀直哉自身も、恋愛小説との批評に対し、

「思いがけなかった」

「そうゆう見方もできるという事はこの小説の幅であるから、その意味では嬉しく思った」

「恋愛小説を書きたいとはすこしも思わなかった」

と書いている。

では、志賀直哉は、この小説でなにを書いたのだろうか。

『暗夜行路』のあとがきに、志賀直哉自身が述べている箇所がある。

「外的な事件の発展よりも、事件によって主人公の気持が動く、その中の発展を書いた」

確かに『暗夜行路』では、主人公の内面の葛藤が描かれている。

主題は、倫理的なものだ。

では、なぜ一般に「恋愛小説」というイメージがあるのだろうか。

それは一つに、志賀直哉の文体がそうさせているのではないか。



志賀直哉の文体

志賀直哉を若い頃から高く評価していた人に、

夏目漱石と芥川龍之介が挙げられる。

芥川は、

「書きたくても書けない」

漱石は、

「文章を書こうと思わずに、思うまま書くからああゆう風に書けるんだろう。俺もああいうのは書けない」

と、志賀直哉の文体について話したと言われている。

志賀直哉は頑固に自分の表現を追い求めた。

「原稿の書き直しをする度に枚数が減る」

という伝説が有名だが、

的確な表現を追求していたことは、そこからも想像できる。

そうして生まれたのがあの無駄のない文章であり、

それは今もなお、小説文体の理想のひとつと見なされている。

その軽やかな文体は、難しい主題の上を一気に読み進めていく力がある。

「恋愛小説」として読んだ後に、深い気づきを与えてくれるのが、志賀直哉の文学だ。

『暗夜行路』

内容説明
祖父と母との過失の結果、この世に生を享けた謙作は、母の死後、突然目の前にあらわれた祖父に引きとられて成長する。鬱々とした心をもてあまして日を過す謙作は、京都の娘直子を恋し、やがて結婚するが、直子は謙作の留守中にいとこと過ちを犯す。苛酷な運命に直面し、時には自暴自棄に押し流されそうになりながらも、強い意志力で幸福をとらえようとする謙作の姿を描く。





-小説, 文学, 知識
-, ,

執筆者:


comment

メールアドレスが公開されることはありません。

関連記事

小説家志望者が社会言語学を学ぶべき理由。『日本語は「空気」が決める~社会言語学入門~ (光文社新書)』から小説における言語共同体を考察する。

「文は人なり」と「アイデンティティ」 「文は人なり」という言葉がある。 その人が使う言葉が、その人を表す。 言葉と人との同一性だ。 同一性というと、アイデンティティという言葉もある。 アイデンティティ …

中原中也はイケメンか 大岡昇平『中原中也』

  中原中也と聞くと、 どのような姿を思い浮かべますか。 暗いハットの下に光を帯びたモノメニアックな目。 スーツ姿で寝癖の付いた髪。 幼年時代の尖った耳。 おそらくこの3つのうちどれかであろ …

『「稼げる文章」の書き方は“守破離”に学べ! ~簡単3ステップで効率的に文章力をアップさせる方法~』有賀ていや新刊発売!

「稼げる文章」についての本が発売されました。 いまや、文章で誰もが稼げる時代。 それは、ブログであったり、 クラウドソーシングであったりする。 「副業」のブームの到来で、 誰もが使えるツールとして注目 …

BRUTUS(ブルータス)『危険な読書』からオススメ本を紹介。前回は筒井康隆。今回の危険な作家は?

BRUTUS『危険な読書』 以前このブログでも紹介した ブルータスの『危険な読書』。 2018年1/1・15合併版で、 同じ名前の『危険な読書』が発売された。 BRUTUS(ブルータス) 2018年 …

立川談春『赤めだか』ドラマ挿入歌と立川談志の名言

立川談春とは? 1966年、東京都生まれ。 1984年、17歳で立川談志に入門。 1988年、二ツ目昇進。 1997年、真打昇進。 2008年、『赤めだか』で講談社エッセイ賞受賞。 近年、『ルーズヴェ …