「危険な読書」
そう題された「BRUTUS」が2017年1月に発売された。
・10代で読んでおきたい異常本
・荒唐無稽を味わう
・危険な作家
・世界の奇書・珍本
・最も危険な作家、筒井康隆
・(AIが書いた)小説の時代
・私の価値観を180度変えた一冊
などなど、目次を見るだけで、鼓動が早まる。
今回は、この雑誌のなかで紹介されている本、
また、私自身が「危険な読書」を体験した本を紹介する。
①危険な作家:蓮實重彦
『伯爵夫人』が第29回三島由紀夫賞を受賞し、
その会見が話題となった。
まさに「危険な会見」であったのだ。
著者の静かな怒りが会場を凍らせた。
「受賞作である『伯爵夫人』の主人公は
映画好きと言う点で作者自身を想起させるが、
意識はしたか?」
といった趣向の質問に、
蓮實重彦は、こう答えた。
「馬鹿な質問はやめていただけますか?」
この著作は3万部を超えるベストセラーとなった。
その原因の一つとして、この会見が話題になったから、
ということが言える。
蓮實重彦はなぜ、このような回答をしたのか。
そこには話題を作るための戦略があったと言われている。
批評家・教育者として日本トップレベルの彼。
作者と作品を同じ次元で考えることに我慢ならなかったのであろう。
そんな質問内容の馬鹿馬鹿しさを利用して、
かれは「危険」な状況をつくることで、話題を集めた。
②『アムステルダムの犬』いしいしんじ
読書は時として、人を動かす。
私はこの本を読んで、
その舞台であるオランダ・アムステルダムに行った。
気付くと、行ってた。と言った方が正しいかもしれない。
それほどこの本はアムステルダムを魅力的に映し出し、
まんまと私は陶酔してしまったのである。
この本は、いしいしんじ氏の旅行記である。
金のない男(いしいしんじ)が、
「自称路上似顔絵書道家」
として、墨で描いた似顔絵を路上販売をする。
そうして日銭を稼ぎ、
酒を飲んだり、○○したりするのだ。
そんななかで男は、一匹の犬に出会う。
のんびりとしたなかにも、
しっかりとした生命感をかんじさせる奇妙な本だ。
そしてアムステルダムの魅力を事細かに伝えてくれる。
私にとってもっとも「危険な読書」を経験したのがこの本である。
ちなみに、いしいしんじの本のなかで、
もう一つ、かなり危険な本がある。
中島らもとの対談エッセイである、
『その辺の問題』だ。
タブーとされることを、一から十まで経験してきた二人が、
ユーモアとともに語りあっている。
危険な読書好きには、必読である。
③最も危険な作家:筒井康隆
この「BURUTUS」には、
最も危険な作家として筒井康隆が挙げられている。
同人誌『NULL』を創刊し、同誌に発表した
『お助け』という作品で、
筒井康隆は、江戸川乱歩に認められた。
現存する作家と、江戸川乱歩が実際に繋がっていたというのが、
当然と言えば当然なのだが、
なんとも不思議な感じがする。
BURUTUSのなかで、
佐々木敦と中原中也が筒井康隆の傑作について話し合っている。
2名はそれぞれ筒井康隆のベスト本を紹介している。
佐々木敦
『虚人たち』
日本だけでなく世界的に見てもメタフィクションの傑作。
その実験性に富んだ作風は、後の筒井作品の先駆けでもある。
中原昌也
『エロチック街道』
短編集。超虚構性をモチーフにした作品群であり、
言語実験やスラップスティックなど多彩さを味わえる。
ちなみに私にとってのベストは、
『最後の喫煙者』だ。
筒井康隆の小説のおもしろさが、これでもか、
というほどに詰まっている短編集である。
初頭効果もしれないが、私はこの本が筒井康隆との出会いであり、
彼の作品にのめり込むきっかけとなった。
「BURUTUS」では、
筒井康隆本人のインタビューが掲載されている他、
インタビューであったはずのページが、小説になっていたりと、
これまた実験的で、彼の「危険な作家」っぷりを存分に味わえる。
④『けものになること』坂口恭平
2017年、早くも私にとってベスト小説と出会った。
『けものになること』である。
ドゥルーズになった「おれ」が『千のプラトー』第十章を書き始める。
この本に関しては、別日に書いているので、
そちらを参照していただきたい。
⑤『うわさのベーコン』猫田道子
雑誌「Quick Japan」に掲載されるやいなや、
大波紋を呼んだこの小説。
脈絡のないスト―リ、無茶苦茶な敬語、数多くの脱字・・・
小説の概念を覆す、問題作だ。
小説を書いている人、にとっては、一度は読んでおくべき幻の小説である。
まだまだ紹介したい本があるが、
そろそろ「危険な読書」をしたくなってきたので、
今回はこの辺で。
また機会があれば別の本も紹介します。